「テトリス・エフェクト」これはみんな読め! #133冊目 #1000冊紹介する #献本
これはおもしろい!なるほど、これはハイエナさん、じゃなくて、翻訳の小林啓倫さんが夢中になるわけだ。いや、渾身の一作だ。
と同時にこんな本は類書なんかあるわけがないので、ちょっと慎重に紹介したいと思います。なお、この本は翻訳者の小林さんより、献本いただいております。ありがとうございます。
まず、この「テトリス・エフェクト」の冒頭を読むだけでもわかることは、この本はドキュメンタリーであるだけではなく、一流のスパイ・ミステリー小説でもあるということ。
さらに、そこにテトリスという、なにをどういう種類でランキングしても、世界最高のゲームソフトの1本に入るしかないマスターピースを主人公にした、ビデオゲームという業界のこの30年ぐらいの歴史が詰まっていること。
そして、これはもう昭和と同レベルに見かけることがなくなった言葉である冷戦構造というものが、まだギリギリ残っていた時代の歴史書でもあるということです。なにしろ、この本には、ピョートル大帝まで出てくるのですから。
私が知っているソビエトの姿などというのは、ミグとかバイコヌールのような生み出されたもの以外には、ゴルゴ13に頼る程度のものです。
それだけに、この時代にテトリスを舞台にして、これだけの物語が動いていたこと、そしてそれが今回このような形で誰でも読めるような形で表沙汰になったことに感激するしかないわけです。
この物語は米ソの2人のコンピュータープログラマー、ヘンク・ロジャースとアレクセイ・パジトノフが主人公です。
米ソっていう表現がもう懐かしいですが、この向き合った世界で同好の士を見つけた時の感激というのは、この後ネットの普及で世界中の至るところで繰り返されてきたことです。
もちろん、われわれはその後の2人の未来も知っていますし、テトリスがゲームボーイという最高の伴侶を得て、まさに世界最大のヒット作になったことも知ってますし、そもそもソ連が崩壊したことも知っているわけです。
しかし、名作「ジャッカルの日」がそうであるように、結果を知っていることは、作品の良さを損なうことはありません。むしろ、自明の結果に向かっていくプロセスを余計に楽しめることにつながるのです。
とりあえず、1章を読み終えたところですが、主人公2人がこの状態からどうやって勝ち戦につなげたのか、どうにも想像がつかない程度には、絶望感たっぷりです。この先も楽しみで仕方がありません。
ところで、今回の「テトリス・エフェクト」は、普段小林さんが翻訳しているような本とは、少し芸風が違うような感じの本ではあります。
こんな本の翻訳までこなしてしまうなんて、ひょっとして小林さん!フレデリック・フォーサイスお好きですか?
いやもっというとその翻訳者である篠原慎さんの文章が、小林さんは実はお好きなのではないですかね。と、ボールを投げかけて、この紹介記事は終了です。とにかく小林ハイエナさんグッドジョブです。
とにかく、みんな読みなさい。
テトリスやったことある全日本人は、損はさせないから読みなさいという本です。
ということで、2017年の私のベスト本はこれで決定です。映画にもなるでしょうね、これ。