マースクの新造グリーンメタノールコンテナ船、内部の一般公開行ってきた。こんな大サービス、マースクに感謝しかない
理解してませんでしたけど、グリーンメタノール船はコンテナ船の世界的なトレンドなのですね
世界最大のコンテナ船会社であるマースク。そのマースクが突然新造船の一般公開のアナウンスをXでしたのが2024年の3月20日。
このマースクのSNSに対する取り組みの感じは、ONEのSNSに対する取り組みからの影響という感じはしました。とにかくすごくていねいです。
ということで、4月5日。この日は車で行くこともできた大黒ふ頭ターミナルまで行ってきました(普段は一般車は入れません)。
そこにいたのは、マースクの新造グリーンメタノールコンテナ船である「ASTRID MAERSK(アストリッド マースク)」。
結果的に背景となってしまった横浜ベイブリッジと並ぶことで、アストリッド マースクのその大きさの感じの違和感というのは伝わるかと思います。
アストリッド マースクは世界最大級のコンテナ船ではありませんが、要するに1万個を超えるコンテナを運ぶことができるクラスです。
そして、こいつのすごいところは、化石燃料を使わないコンテナ船というところです。あとで聞いたのですが、重油よりも燃料量としては多くなるそうですが、脱炭素化ということで、それでもやるという判断だそうです。そりゃ、このサイズのコンテナ船ですから、一度の航海で使う量も尋常ではないわけですからね。
見学会ツアーが始まる前の待ち時間、セルフィースポットが用意されていたので、まずはそちらに。
喫水線の位置からわかるように、なにしろ運用中なら1万個以上のコンテナを積んでいるコンテナ船が、きょうは空荷なわけですから、とにかく普段よりも背が高いわけです。
しかも、そのきょうは背が高い物体の幅は約53mで長さは約350mなわけですから、その迫力たるや、、、ということなのです。
で、こんな船にどうやって一般客が乗り込むんだろうと思っていると、いやな予感がする階段が目に入りましたw
なるほど、そりゃ見学会の案内文で、乗船時は荷物NG・平らな靴でという但し書きがあったわけですね(カメラはオッケー)。
乗り込みの様子は以下の動画でも確認可能です。
時間になったので、ターミナルの建物に戻って、ツアーの案内や注意事項などを聞いて、いざ乗船です。もちろん6階分の階段を上ります。
ということで、いきなりメインイベントでコンテナ船の甲板(ハッチカバー)です。個人的には、もうすでにお腹いっぱいです。ここでこのまま下船しても問題ないレベルでした。
赤い枠の先の方に消失点が見えますね(見えないとも言えるか)。なにしろコンテナ積載量1万6000個以上ですからね、、、そりゃこういう光景になりますよね。
なお、この見学会は18歳以上じゃないと参加できなかったのですが、この光景を見て、それも止むなしと思った次第です。
このまま、ここでコーヒーでも飲みたいところでしたが、そういうわけにもいかないので、ひとつ下の階層に降りて、前の方のブリッジ部分に移動しました。
で、これがまたこの船の特徴なのですが、コンテナ船の人がいる部分は、操舵室も含めて全部前に集中しているんですよ。うしろにあるのは基本エンジンのみ。前から人がいるエリア、コンテナ区画、エンジンという並びということですね。
意外と広くないんだなと思った人もいるかもしれませんが、それもそのはず乗務員は総勢20数人ぐらいなんだそうです。
そう、そもそも意外と人が乗ってないんですよ。途中、食堂もありましたけど、そこもけっこうこんなもんなんだなという広さでした。
いよいよメインブリッジです。ここも当然最新鋭設備なのでしょう。
なお、各所各所でちゃんと説明タイムと質問タイムも設定されていました。
私がまわった回では、この人(たぶん副キャプテン)に対して「どうして航海士になったのか?」という質問が出ていました。
「毎日、同じデスクで働く自分が想像できなかった」
なんという明快な回答。
他にも、記憶しているところをメモしておきます。
- なにも積載していない状態で約48000t
- コンテナ積載量は約1万6000
- 救命ボートは人員に対して余剰で乗れるようにしてある
- 航路によって違うけど、最大で1か月近い航海もある
- 横浜から中国、今はどうしても喜望峰ルートもある
- スエズ運河経由だったら13日で行けた、、、赤道を2回通過しないといけない
- メタノールの方が燃料の消費量はずっと多いけど、そういう問題ではない
- きれいな服で食事を取る部屋と作業着のまま食事ができる部屋を分けている
- みんな仕事で食事の時間がまちまちなので、いつでも食事が取れるようにしている
- ジムもあるし、シネマルームもあるし、BBQスペースもプールもある
- 1万6000トン分のメタノールの燃料タンクがある
- 操舵部がいちばん前にあるのはコンテナ船としてはめずらしいけど、だからといってむずかしいとかそういうことはない
- エンジンがうしろで居住区が前なので静かで良い
ここはたぶん接岸時の操舵部。スラスターのためのジョイスティックなどが並んでいました。
いままで下から見上げていたコンテナ収納部も上から見えます。
ちらっと見えたエンジン部分(のなにか)。
そして帰りは、またこの階段ですw
後方、うしろのセンターにエンジンが設置されているそうです。
ということで、要するに今回の見学会は!
1時間かけて、ビル6階分ぐらいを上って、約350mの船を1周して、ブリッジ部分5階を上り下りして、ビル6階分ぐらいを下ったわけです。これで所要時間は約1時間なので、要するにほぼ歩きっぱなしですね。
でも、それぐらいの時間をかけないとこの巨大コンテナ船をまわることはできないわけで、それだけでもこの大きさの感じというのは伝わるのではないかと思います。
さて、船を無事に下りて、ターミナルに戻ろうとすると、なんかあります。
ああ、そうか!とこの見学会の趣旨について思い出しました。マースク、すでにグリーンメタノールの船舶を25隻も発注しているのね。
そして、メタノールとメタノールエンジン。
そして、Zero Emissionということで、日産アリアも展示されているという次第なわけですね。
で、なんで日産なの?ということについては、あとで説明します。
さてさて、じゃあなんでそもそもこのマースクの新造グリーンメタノールコンテナ船である「ASTRID MAERSK(アストリッド マースク)」が横浜にいたのか?という話をまだしていませんね。
本家のプレスリリースはこちら。
AIによる翻訳と要約
マースクは2024年4月4日、横浜で2隻目の大型メタノール燃料対応コンテナ船の命名式を行い、「Astrid Mærsk(アストリッド・マースク)」と名付けました。この船は、マースクが2024年から2025年にかけて建造予定の18隻の大型メタノール燃料対応船の一部であり、同社のネットゼロ目標達成と顧客の脱炭素化目標の支援に大きく貢献することが期待されています。
マースクCEOのVincent Clercは、グリーンメタノールで運航可能な新しい船隊を歓迎し、海上輸送のエネルギー転換に向けて重要な一歩を踏み出していると述べました。マースクは2040年までに全事業でネットゼロの温室効果ガス排出目標を設定しており、25隻のコンテナ船をグリーンメタノールで運航可能な二元燃料エンジンを搭載する予定です。
横浜市とのマースクの協力的アプローチは、横浜市におけるグリーンメタノールバンカリングインフラの開発に専念し、排出量削減と海運業界内での環境に優しい慣行の促進に対するマースクのコミットメントをさらに強固なものにしています。
そして、横浜市。今回の入港は命名式が目的であったということですね。
横浜市は、2050年の脱炭素社会の実現を目指しカーボンニュートラルポートの形成を進めており、昨年12月にマースクASと三菱ガス化学株式会社とグリーンメタノールの横浜港における燃料供給の実施等の利用促進を目的に覚書を締結しました。
で、これはこれとして、今回のマースクの新造グリーンメタノールコンテナ船は、かなりニュースにもなっているので、各社のニュースから、「ASTRID MAERSK(アストリッド マースク)」とはどういうことなのか、拾ってみました。
次世代燃料の一つとされる「メタノール」を使うことができ、従来の重油と比べて二酸化炭素の排出量を一日あたりおよそ280トン削減できるということです。
メタノールのすごさというべきか、重油のすごさというべきかわからないところですが、なるほどこれはやるべき課題ということがわかります。
グリーンメタノールは食品廃棄物や家畜の排せつ物から生成する次世代燃料の一つとして注目を集めている。マースクが海外から調達するものや、三菱ガス化学が新潟工場(新潟市)で生産するものを使う。実用化に向け早ければ24年内にも横浜港で実証実験を始めたい考えだ。
となると、その大量に使うグリーンメタノールをどこか供給するのか?という話もあるわけで、もちろんそこも話はついているわけです。燃料調達できなければ、寄港地としてはまさに話になりませんからね。
日本と欧州を結ぶ航路で、主に自動車部品の輸送に使う。航行中のCO2排出量を大幅に減らせるメタノール船で、自動車部品などのサプライチェーン(供給網)の脱炭素化につなげる。
日産との関係はここですね。つまりサプライチェーンの脱炭素化という動きですね。主要クライアントとなるので、日産と関係が深い横浜にくるし、命名式も横浜でやったと。
なお、船は伝統的にセレモニーは女性がメインでやるものなので、日産の社長ではなく社長夫人が命名ということですね。
そして、マースクだけではなく、例えばONEもメタノールコンテナ船を発注済。
そして、最後に製造関連。「ASTRID MAERSK(アストリッド マースク)」は韓国製ですが、当然中国もやっている。
もちろん日本も。
ということで、特にオチはないですが、マースクの一般見学会に行ったおかげでだいぶいろいろと勉強になりました。
というか、こういう気持ちになるので、やっぱリアルイベントって大事なんですね。
で、そういえば、脱炭素化の展示をマースクはさすがコンテナでやるんだなと思ってたのですが!
その展示をそのままコンテナごと運ぶんですね。
さすがマースクだ、まさにコンテナナイズされている!